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追悼       49年度卒  直井秀明

 長谷が死んだ。 一緒に山を知ったあの長谷が死んだ。 新人として一緒に登ったあの夏山で鼻血まで出していたあの長谷が、 誰をも寄せつけないヒマラヤの山で死んだ。

 長谷よ。おまえは忘れたわけではあるまい。「山では絶対に死んだらいかん」と言ったあの西村先生の言葉を。

 おまえは完璧な山男だった。 誰もがそれを認める山男だった。 俺などとうてい手の届かぬ完璧な山男だったのに。 一体何がおまえの命を奪ったんだ。

 計画、 準備 装備、 気象判断、 体力、 こんなもの欠けていた様な事はおまえには絶対にありえない。退却を恐れる様なおまえでも絶対にない。

 おまえの自由を奪ったのは、安堵から来る油断なのか。 それとも義務感なのか、慾なのか。 俺に教えてもらえるのは、おまえが死んだという事だけじゃ。 長谷よ。 おまえ、 少し冷たいぞ。

 長谷よ。 おまえとはよくバカ笑いしたのになぁ。 もう、 おまえと一緒にバカ笑いする事もないのか。おまえはどうせ天国で西っさんに隠れて、 徳繁さんと原と3人でまたバカ笑いをするんだなぁ。

 長谷よ。 安らかに眠りたまえ。 おまえの一番愛した山とともに。

 さようなら 長谷伸宏君。

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